ハリネズミ

[獣医師監修]ハリネズミの歯周病、口の腫瘍の原因・症状・診断方法・治療方法

とんがった口がかわいいハリネズミですが、実は口のトラブルで病院を訪れるハリネズミは少なくありません。

ハリネズミの口の中を見るのは難しく発見が遅れることもあるので、口の病気の特徴を知って早期発見できるといいですね。

ハリネズミの口の病気

ハリネズミの歯は全部で36本、間隔が広めに生えていて、俗にいうすきっ歯の状態です。

このため犬猫のように歯石がびっしりつくことは少ないのですが、歯みがきができないため口の中が不衛生になりやすく、歯周病が多くみられます。

また腫瘍の発生率が高いハリネズミは、口の中にも腫瘍ができることも多いです。

ここでは歯周病と腫瘍というふたつの口の病気について解説します。

歯周病

歯周病は、歯とその周囲に細菌が感染して炎症が起きた状態です。

まず歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)に歯垢がたまり、歯垢の中で増えた細菌が炎症を起こします。

はじめは歯ぐきの腫れだけですが、進行すると歯を支える土台の骨にも炎症が及び、歯の根っこに膿がたまったり、骨が溶けて歯がぐらぐらしたり抜けてしまうこともあります。

原因

野生のハリネズミは昆虫を多く食べており、昆虫の線維が歯の健康を保っているという説がありますが、飼育されているハリネズミはドライフードが主食で果物など糖質が多いものを与えられていることも多く、このような食事が歯周病の原因のひとつだと考えられています。

また人と同じくハリネズミも高齢になると歯周病が増えるので、長生きのハリネズミが増えてきたために、歯周病も増えているのかもしれません。

症状

口の違和感や痛みのために食べムラが出たり、食欲がなくなったり、口臭が強くなったり、よだれや出血で口の周りが汚れてきたりします。

ひどくなるとあごが腫れたり、歯がぐらぐらしたり抜けることもあります。

口に手を持ってくるなど口を気にするしぐさが増えたことで気づかれることもあります。

人の歯周病では歯ぐきが痩せて歯が伸びたように見えますが、ハリネズミは逆で、歯ぐきが盛り上がるようにして腫れてきます。

ひどくなると盛り上がった歯ぐきに歯が埋もれたようになってしまうこともあります。

このため、ハリネズミの歯周病は腫瘍のように見えることがあります。

歯周病は口の中全体に起こり、腫瘍は口の一部にできる傾向がありますが、正確にこのふたつを区別するには、盛り上がってきた部分を切除して病理組織検査しないとわからないこともあります。

診断方法

口の中を見るだけなら無麻酔でもできることが多いですが、病理組織検査などしっかりとした検査を行う場合は麻酔が必要になることもあります。

レントゲン検査で肉眼では見えない歯の根っこやあごの骨の状態を調べます。

歯ぐきを無菌の綿棒などで拭い、そこから培養して細菌の種類や効果のある抗生物質を調べることもあります。

治療方法

抗生物質で細菌の増殖を抑え、抗炎症剤で炎症と痛みをとることが中心になります。

歯ぐきの盛り上がりがひどくしこりのようになっている場合は、病理検査を兼ねて手術で切除することもあります。

完全に取り切れない場合は、残った部分をレーザーで焼いたりします。

歯みがきで口の中を清潔に保つことができないと、治療で改善しても再発することが多く、内科と外科の治療を使い分けながらうまくコントロールしていくのが目標になります。

歯肉炎と腫瘍を見分けることが難しいため、歯肉炎と診断されても定期的に口の検診を受けて経過を注意して見ていく必要があります。

口の腫瘍

ハリネズミは体のさまざまな部位に腫瘍ができやすい動物ですが、口の中も例外ではなく、いろいろなタイプの腫瘍ができます。

症状

よだれが増え、口臭が強くなったり、口をくちゃくちゃさせる、歯ぐきに腫れがあるなどの症状で気づかれます。

進行すると血液や膿が出たり、口からはみ出すくらい腫瘍が大きくなって口を閉じることができなくなったり、顔が変形したり、歯が抜けることもあります。

上顎にできる腫瘍は、大きくなると下から目や鼻を圧迫するので、鼻詰まりが起きたり、目が飛び出ることもあります。

歯周病と口の腫瘍は症状が重なる部分も多いので見分けるのが難しく、歯肉炎がなかなか治らないと思っていたら腫瘍だったというケースも珍しくありません。

悪性の腫瘍は大きくなるスピードが早く、出血や自壊を起こしやすい傾向があります。

診断方法

レントゲン検査で骨に浸潤があるか、他の臓器に転移があるかなどを調べます。

確定診断は、切除したしこりの病理検査で行います。

扁平上皮癌が一番多くみられますが、エプリス、悪性黒色腫、扁平上皮乳頭腫、骨肉腫などの報告もあります。

治療方法

手術で切除するのが基本です。

骨まで浸潤していて取り切れないこともあり、その場合は薬で炎症や痛みを抑えながら、大きくなってきたら切除やレーザーで焼く、ということを繰り返したり、食事の手助けをしたりして、なるべく快適に苦痛のない生活ができるようにケアしていくことが中心になります。

まとめ

病気の早期発見のためにも、おうちで口の中がチェックできると安心ですね。

性格にもよりますが、慣らしていくうちに口の中を見せてくれたり、口のケアをさせてくれるようになる子もいます。

歯ブラシを嫌がるときはまずは濡らした綿棒を口に入れることからトレーニングしていくのも良いでしょう。