ハリネズミ

[獣医師監修]ハリネズミのメスの生殖器の病気の原因・症状・診断方法・治療方法

ハリネズミはウサギと同様、メスに特有の病気がとても多い動物です。

年をとるにつれ発生が増えていきます。

ハリネズミの女の子を飼っている方にはぜひ知っていただきたい、ハリネズミのメスの生殖器の病気について解説します。

ハリネズミのメスの生殖器の病気

ハリネズミのメスの生殖器の病気でいちばん多いのは子宮の病気です。

また、腫瘍の発生率が高いハリネズミは、乳腺腫瘍も良くみられます。

膣脱や膣の腫瘍など膣の病気もあります。

ここではハリネズミのメスによくみられる生殖器の病気について解説したいと思います。

子宮の病気

メスのハリネズミ特有の病気で一番多いのは子宮の病気です。

メスのハリネズミが血尿をしたり陰部から出血した場合、子宮が原因のことがほとんどです。

子宮の病気の原因としては腫瘍が多く、子宮腺癌や、子宮内膜間質肉腫、線維肉腫などいろいろな腫瘍が発生しますが、血種や内膜過形成など腫瘍でないケースも見られます。

症状

症状は血尿や陰部からの出血で気づくことが多いです。

長期にわたって少しずつ出血することもあれば、突然大量の出血が起きることもあります。

出血の程度によっては貧血になり、歯茎や舌、耳の色などが白っぽく見えることがあります。

子宮が腫れるため、おなかが大きくなったり、片側だけ膨らんで見えるときは注意が必要です。

診断方法

まず触診で、子宮が腫れているかどうかを調べます。

レントゲンや超音波でより詳しく子宮の状態をみることができ、お腹の中に二次的な感染や腹水などの異常がないか、他の臓器に転移がないかなどを確認します。

血液検査で貧血や内臓の状態を調べて、手術に耐えられるかを判断します。

治療方法

お薬を飲むことで完治させることはできず、基本は手術で子宮を取り除きます。

卵巣が腫瘍化していることは少ないのですが、のう胞などの異常を起こしていることがあり、通常卵巣と子宮を同時に切除します。

切除した子宮の病理組織学的検査を行い、腫瘍の種類を特定します。

乳腺腫瘍

腫瘍の発生率がとても高いハリネズミですが、メスのハリネズミでは乳腺腫瘍もよく見られます。

ハリネズミの乳腺腫瘍のほとんどは悪性(乳がん)と言われており、早期発見が大事です。

症状

ハリネズミの乳腺は前足の付け根から後ろ足の付け根を結んだ直線上にあり、左右に3対の乳頭があります。

このあたりにできたしこりは乳腺腫瘍の可能性があります。

しこりは皮膚のすぐ下にあり、慣れている子は飼い主さん自身で見つけることができます。

最初は小さいものでも徐々に大きくなり、いつものように丸まることができないということで気づくこともあります。

診断方法

まず触診で大きさや、どこまで浸潤しているかを調べます。

膿瘍や肉芽腫など腫瘍でないものや、乳腺以外の腫瘍であることもあるので、しこりに針を刺して細胞を取り、顕微鏡で観察して腫瘍かどうか、腫瘍だとしたらどのようなタイプのものかを推察します(針生検といいます)。

針生検では腫瘍の種類が確定できないこともあり、手術で切除したしこりの病理組織検査で確定診断をします。

手術が必要な場合、血液検査で内臓の状態を調べて手術のリスクを評価したり、レントゲンや超音波検査で転移があるかどうかを確認します。

治療方法

基本は全身麻酔下で切除します。

ハリネズミの乳腺腫瘍は悪性のことが多いので、再発を防ぐために、しこり部分だけでなくリンパ節を含めて広範囲に切除しなければならないこともあります。

切除後も再発がないか、注意深く見ていく必要があります。

すでにほかの臓器に転移がある場合、手術ができないこともあります。

膣脱・膣の腫瘍

膣脱は陰部から膣の一部が飛び出した状態です。

発情期や卵巣の異常によって分泌された過剰なエストロジェンにより膣が腫れた(過形成)状態になり、膣から飛び出します。

膣の腫瘍は腫瘍細胞が増殖して大きくなったもので、膣脱とは違うものなのですが、一見膣脱のように見えることがあります。

症状

陰部から肉様のものが飛び出し、本人が気にしてなめたり噛んだりします。

出血が見られることもあります。

飛び出した状態が長く続くと、壊死を起こして黒く見えます。

診断方法

主に視診と触診によって診断しますが、膣脱と膣の腫瘍を見分けるには、飛び出した部分を切り取って病理組織診断が必要なこともあります。

治療方法

壊死が起きていない膣脱では、綿棒を使って飛び出た膣をもとの場所に戻し、抗生剤や抗炎症剤を投与することでおさまることがあります。

過剰なエストロジェンの分泌をなくして再発を予防するために、避妊手術を行うこともあります。

壊死が起きている場合や、膣の腫瘍が疑われる場合はその部分を切除して整復します。

腫れた部分が尿道を巻き込んでいる場合は、手術の後に排尿がうまくいかなくなることがあります。

まとめ

高齢になるとメスのハリネズミはかなりの確率で生殖器の病気になります。

避妊手術をすることでハリネズミの乳腺腫瘍が予防できるというデータは今のところありませんが、少なくとも子宮卵巣の病気に関しては避妊手術の効果があります。

病気を発症してから、高齢になってからの手術はいろんな面でリスクが高くなりますので、犬や猫のように、若く健康なうちに避妊手術をするのが良いのかもしれませんね。