ハリネズミ

[獣医師監修]ハリネズミの下痢の原因・症状・診断方法・治療方法

人と同じように、ハリネズミもいろんな理由でお腹の調子を崩します。

どんなハリネズミでも一度は下痢を経験するのではないでしょうか。

そんなとき、慌てず対処できると良いですね。

ここではハリネズミの胃腸の病気でよくみられる下痢について解説します。

ハリネズミの下痢

ハリネズミは主に虫を食べる肉食寄りの雑食性の動物で、盲腸を持たないなど消化システムはシンプルです。

このためウサギのような繊細な消化システムを持つ草食動物に比べて胃腸のトラブルが特に多いわけではありませんが、下痢はありふれた症状です。

ここではさまざまな病気のサインである下痢について解説します。

原因

下痢の原因は、下記のようにさまざまです。

  • 暑さ寒さなどの不適切な温度管理
  • 合わない食事
  • ストレス
  • 感染症
  • 異物
  • 腫瘍

感染症は比較的若いハリネズミでみられることが多く、サルモネラ(細菌)や、カンジダ(酵母)、クリプトスポリジウム(原虫)などが原因となることが知られています。

ショップですでに感染しているケースもあります。

アメリカではハリネズミからサルモネラが人に感染した事例があり、特に小さいお子さんは感染リスクが高いため注意が必要です。

クリプトスポリジウムも人に感染する可能性があり、このような感染性の下痢が疑われる場合は、スキンシップやケージの掃除など気をつけて行う必要があります。

カンジダは人の体内にも存在する通常は無害な常在菌ですが、ハリネズミの抵抗力が落ちたり、抗生物質を長いこと使用したりすることで異常に増殖して下痢の原因になることがあります。

好奇心旺盛なハリネズミは布やひも、木片やプラスチック、ペットシーツなどを誤って食べてしまい、排泄できずに腸にとどまり下痢を起こすことがあります。

また腫瘍の発生率がとても高いハリネズミは、腸にもリンパ腫などの腫瘍ができることも少なくありません。

アレルギーや慢性炎症性腸疾患が下痢の原因となることもあります。

症状

ハリネズミの正常な便は明るい茶色~暗い茶色で細長く、やわらかめですがティッシュペーパーでつかんで取ることができます。

下痢になるとさらにやわらかくなり、形もなくなりひどくなると水のような便をすることもあります。

出血があると便の色が赤くなったり黒くなったりします。

メスのハリネズミでは、子宮からの出血のこともあるので良く観察します。

はがれた腸の粘膜がゼリーのように便についていることもあります。

食事がとれなかったり、胃腸での滞在時間が短くすぐに排泄されてしまった便は、緑色をしていることもあります。

このような便の異常とともに、元気や食欲がなくなったり、嘔吐するなどの症状がみられることもあります。

下痢が長く続くと痩せてくることもあります。

子どものハリネズミでは症状の進行が早く、あっという間にぐったりしてしまうことも少なくないため、様子を見ずに治療を開始した方が良いでしょう。

若くないハリネズミの下痢がなかなか治らず、体重が減ってくるような場合は、腫瘍も疑われます。

診断方法

まずは飼育環境を見直して、温度や食事などに問題がないか確認します。

夏場はフードが痛みやすく、腐敗したフードが下痢の原因になることがあります。

また、野外で採取した虫を食べさせていると、虫を介して感染症を起こすことがあるので、餌の虫の入手先には注意が必要です。

病院では、まず触診をしてガスのたまり具合や、異物や腸の腫れを確認します。

便を顕微鏡で観察して消化状態をみたり、病原体がいないかを調べます。

サルモネラの検査には便の培養検査が必要になることもあります。

レントゲンや超音波検査ではお腹の中をより詳しく調べることができ、胃腸の中の異物や腫瘍が見つかることがあります。

腫瘍がある場合は、針を刺して細胞を取り、顕微鏡で観察してどんな腫瘍かを調べる検査を行うこともあります。

治療方法

環境に問題がある場合はそれを改善します。

下痢のときはケージが汚れやすく、その上をハリネズミが歩き回ることで体がよごれて皮膚がかぶれてしまうこともあるので、ケージの掃除をこまめにするようにしましょう。

食事の内容が偏っている場合は、低脂肪高たんぱくになるよう調節します。

消化しにくい虫はたくさん与えないようにします。

水分補給もかねてフードをふやかしてあげても良いでしょう。

感染症の場合は、それに合わせた抗生物質や駆虫剤を投与します。

一緒に下痢止めや整腸剤が使われることもあります。

胃腸内に異物があり自力で排泄できない場合は、手術で取り出します。

胃腸の腫瘍は、可能なら手術で切除し、取り出した腫瘍を病理組織検査に出して腫瘍の種類を特定します。

リンパ腫の場合、ステロイド剤で一時的に増殖を抑えられることもあります。

いずれの原因でも下痢がひどいと、脱水したり電解質のバランスが崩れるため、点滴をすることがあります。

食べないことが続く場合は、流動食にして食べさせるなど食事の補助が必要になることもあります。

まとめ

下痢の原因は多岐にわたり、自然と治るものもあれば、背景に深刻な問題が隠れていることもあります。

ありふれた症状のため深刻に受け止められないこともある下痢ですが、ハリネズミの体が発するサインにしっかり応えてあげたいですね。