「プレーリードック」と「リチャードソンジリス」。
見た目は似ていますが、性格や習性は全く異なる動物です。
しかし日本のペットショップで「プレーリードック」として購入した個体が、実は「リチャードソンジリス」であった、など誤った名称で販売されていることがあるのです。
そのため間違えて購入した個体であるものの、可愛いからそのまま飼い続けているという飼育者が多いのではないでしょうか。
今回は「プレーリードック」と「リチャードソンジリス」の違いについて詳しくまとめてみました。
Contents
どうしてジリスとして販売されていないの?
「リチャードソンジリス」と聞いてアナタは何を思い浮かべるでしょうか。
「プレーリードック」や「ミニプレーリードック」などと言う名称で販売される一番の理由は圧倒的な知名度でしょう。
ジリスを知らない人が居ても「プレーリードック」は多くの人が想像できると思います。
そして近年、ブームが再燃しているにも関わらず2003年3月から輸入禁止対象となっているため、販売できる個体は当時、日本へ既に輸入されていた個体の繁殖個体に限られてしまうので新たな入荷が殆ど出来ないのです。
しかし姿がとても似ている「リチャードソンジリス」であれば規制も無く安価で年中、輸入出来る事から、日本のペットショップ業界では「プレーリードック」又は「ミニプレーリードック」として販売を始めたのです。
最近では間違えて購入したものの、その愛らしさから敢えて「リチャードソンジリス」を買い求める飼育者が増えてきたために「リチャードソンジリス」や他のジリスの仲間が正式名称で販売されている店舗も増えてきたようです。
プレーリードックとの大きな違い?
先ず生息しているエリアが全く違います。
北米大陸にのみ生息する「プレーリードック」に対して、「ジリスの仲間」たちは北米から中米、ユーラシア大陸やアフリカ大陸に至るまで広く分布しています。
次に見た目と習性ですが「プレーリードック」は5種類の仲間たちそれぞれに特徴はあるものの、どれも非常によく似ています。
しかし現在ペットとして流通している「ジリスの仲間」たち4種類は見た目や習性が大きく異なるのです。
毛先の色が異なるなどの僅かな変化ではなく「ジリスの仲間」の場合、見た目が違い過ぎて同じ仲間だとは思えない程でしょう。
では「ジリスの仲間」で現在流通している「リチャードソンジリス」「コロンビアジリス」「ジュウサンセンジリス」「ダウリアハタリス」の4種類について以下で詳しく見てみましょう。
ジリスの仲間たち
リチャードソンジリス
カナダ南部からアメリカ北部の丈の短い草が生えた草原に生息しています。
見た目は「オグロプレーリードック」によく似ていますが「プレーリードック」との大きな違いは「独特の社会性」です。
メスで血縁であれば飼育下においても仲良く暮らせますが、オスの場合は全く社会性を持っていません。
野生下においても単独生活で他のオスと出遭えば激しいケンカになります。
しかし女系社会で常に体の大きいメスが優位にあるため、オスは立場が低いのです。
この点も「プレーリードック」とは異なる点と言えるでしょう。
コロンビアジリス
カナダ及びアメリカの西部、高山地帯やその山麓などに生息していて厚い被毛を持っています。
顔と四肢、お腹の部分は黄褐色で目元の白いアイラインのような模様が特徴です。
「リチャードソンジリス」と比べると2倍程も身体が大きく、特にメスの方が大きいため女系社会は同様です。
ジュウサンセンジリス
北米大陸中央部から東部にかけて分布し、都会の公園などにも生息しています。
名前の通り背中には13本の縦縞があり濃い茶色、白い線、白い斑点と交互に並んでいます。
体重は最大でも140gしかなく、「プレーリードック」と比べると10分の1以下で非常に小さく、「プレーリードック」や「リチャードソンジリス」のようにコテリーは形成しません。
ダウリアハタリス
大連ハタリス、中国ハタリスなどとも呼ばれているロシア、中国などに幅広く分布している種類になります。
全長は最大でも20㎝程しかなく草食性で他の詳細は分かっていません。
「命」の重さは変わらない
ペットショップで「プレーリードック」を飼おうとして「リチャードソンジリス」を購入してしまった場合でも「命」の重さに変わりはありません。
当然、外来種ですから森へ帰すなどという飼育放棄は絶対にしてはいけません。
現在でも「ミニプレーリードック」として販売している店舗は多く、アナタが飼われている個体ももしかしたら「リチャードソンジリス」かも知れません。
一番大きな違いは慣れやすさでしょう。
特にオスだった場合は社会性を持たないため、懐くまで非常に時間がかかり大変な苦労すると思います。
しかし見た目の愛らしさや心を開いてから魅せてくれる仕草は、その苦労を補って余りあるものです。
どうしても「プレーリードック」を購入したいというのであれば、購入したペットショップに生体を返し、信頼できるブリーダーさんを探すのが一番確実でしょう。
メスの個体であれば偽りの名称のように小さなプレーリードックとして飼育していく事も可能ですが、やはり多少の慣れづらさは否めません。
愛情を注げないのであれば、その子が可哀想ですから里親を探すか購入した店舗に返すようにしてください。
偽りの名称に憤りを覚える方も居られるでしょうが本来の「プレーリードック」でさえペットとしての歴史が浅く解っている事が少ないのです。
今の法律などでは犯罪として摘発することは難しいでしょうし、何より個体を選んで判断したのは購入者ですからアナタにも判断できなかった落ち度があるのです。
ペットとしての歴史が浅い野生動物を飼育するという事は、飼育する側にも知識が求められるという事なのです。
まとめ
「プレーリードック」ブームの再燃に伴い、「ミニプレーリードック」として「リチャードソンジリス」が販売されている事も非常に多くあります。
アナタが飼われている個体ももしかしたら「リチャードソンジリス」かも知れません。
しかし命の重さに変わりはなく、間違えて購入してしまったからと言って決して飼育を放棄してはいけません。
愛情が注げないのであればペットショップに返すか里親を見つけるなど飼育者として最低限の事はしてあげて下さいね。
見た目以外は異なる特徴が多いですが、「リチャードソンジリス」も小さなプレーリードックの名称のように愛らしく魅力で溢れています。
どういった形であれ運命として迎え入れるのも出逢いの一つだと思いますよ。