動物病院を受診するハリネズミの半分が皮膚病というデータもあるくらい、ハリネズミによくみられる病気No,1は皮膚病です。
針に覆われていて頑丈そうに見えるハリネズミの皮膚ですが、実はデリケート。ひどくなると針が抜けてしまうこともあります。
ここではそんなハリネズミの皮膚病について解説します。
ハリネズミの皮膚病の原因のほとんどは感染症で、ダニの寄生が一番多く、次いで真菌(カビ)、細菌の感染が見られます。
かゆがる、フケが増える、針が抜ける、などがハリネズミの皮膚病に共通する症状ですが、同じように見える皮膚病でも原因はいろいろです。
かゆみを抑えるためにステロイド剤を投与すると真菌症(カビ)は悪化してしまうなど、治療法が違うと治らないどころか悪化することもあるため、まずは検査をして原因を突き止めてから治療を開始することが大事です。
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ダニの寄生
ハリネズミの皮膚病の多くはダニの寄生によるものです。特にショップからお迎えした直後の子どものハリネズミはダニを持っていることが多いので注意が必要です。
ハリネズミに寄生するダニはほとんどがCaparinia erinaceiというヒゼンダニの一種です。
マダニのように大きなものではなく、顕微鏡で見ないとよく見えない小さなダニですが、目の良い方だと肉眼でも見えることがあり、「動くフケ」と言われたりします。
皮膚病のハリネズミは歩き回るとフケを落とすことが多いのですが、このフケを黒い紙などに乗せて観察すると動く様子がわかることがあります。
症状
強いかゆみが特徴で、後ろ足でしきり掻くくしぐさが見られます。皮膚の変化は主に背中と顔面に現れ、フケが出たり、ひどくなると針が抜けたり、顔面の毛も抜けて、カサカサとしたフケが固まったかさぶたのようなものが皮膚にこびりつくようになります。
診断方法
フケや皮膚についたかさぶたのようなものを顕微鏡で観察して、ダニの虫体や卵を確認します。
治療方法
犬猫のノミダニの薬を使います。皮膚の一部に垂らすスポットオンタイプ、広く皮膚にスプレーするタイプ、飲むタイプ、注射などいろんな投与方法があり、状況に合わせて使います。
1回の投与で症状がかなり改善しますが、体に残ったダニの卵には薬は効かないので、卵が孵化するころに再度駆虫をしなければなりません。
このため、数週間の間隔で3-4回投与を繰り返します。同居のハリネズミがいる場合は、全頭同じように治療します。
また、ケージの中など環境中にもダニや卵が落ちているので、掃除をよくするようにしてください。なかなか治らない場合は、次に解説する真菌症を併発していることもあります。
このダニはハリネズミの間でうつし合いますので、先住のハリネズミがいるところに新しい子をお迎えする場合は、ダニがいないことが確認できるまでは、接触させたり、ケージを隣に並べたりしない方が良いでしょう。
真菌症(カビ)
ダニの寄生ほどではないですが、真菌(カビ)による皮膚病もよく見られます。主にTrichophyton mentagrophytesの感染ですが、Microsporum属の真菌が感染することもあるようです。
ハリネズミの真菌は人にうつるので、飼っているハリネズミが皮膚病で、飼い主さんの皮膚にも異常が出た場合は、飼い主さんも皮膚科に行くようにしてください。
ちなみに、ハリネズミの真菌は人の水虫菌(Trichophyton rubrum)とは違うものです。
症状
フケが出たり、針が抜けたり、ひどくなると赤くなった地肌が露出することもあります。ダニほど強くありませんが、かゆみも出ます。全身に症状が出ることもあれば、頭部や耳など局所的なこともあります。
診断方法
フケや毛、針を顕微鏡で観察したり、真菌用の培地で培養します。培養の結果が出るのには1~2週間かかります。
治療方法
症状が耳など局所的な場合は抗真菌剤の塗り薬で治療することもありますが、たいていは抗真菌薬の内服で治療をします。
人の水虫をイメージしてもらうとわかると思いますが、真菌の治療には時間がかかります。症状が無くなってからさらに1か月内服を続ける必要があるので、完治まで数か月かかることも珍しくありません。
抗真菌薬は内臓に負担をかけるので、治療が長期にわたるときは血液検査で内臓の状態を確認しながら治療を続けることもあります。
ケージやその周囲の掃除も念入りにして再感染や人への感染を予防します。免疫状態が悪くなると真菌感染を起こしやすくなるので、他の病気もあるようだったらその治療も一緒にする必要があります。
細菌感染
ハリネズミの便はやわらかく、その上を歩き回ることで手のひらや足の裏に便がつき、ただれて皮膚病を起こすことがあります。
また爪が伸びっぱなしになっていると爪の間に便が挟まったままになって炎症を起こすなど、足の裏の皮膚病が良く見られ、足底皮膚炎と呼ばれています。
また肥満しているハリネズミは、手足の短さも重なって歩くときにお腹やお尻が床にこすれて皮膚病になることもあります。
このように便が皮膚についたり、皮膚がこすれることで皮膚のバリアが壊れ、そこから細菌感染を起こします。
症状
皮膚が赤くなったり、フケが出たり、かさぶたになったり、ひどくなるとジュクジュクした液が出てただれた状態になります。かゆみはあることもないこともあります。ひどくなると痛みが出ることもあります。
診断方法
皮膚病の部分の細胞をセロハンテープやスライドグラスで取り、それを顕微鏡で観察して細菌がいることを確かめます。
綿棒で皮膚病の部分をなぞって菌を取り、それを培養して菌の種類を確かめたり、その菌に効く抗生物質の種類を調べる検査が行われることもあります。
治療方法
治療は汚れをまず落とし、可能であれば消毒や塗り薬を塗ります。塗り薬が難しい場合や、皮膚病が広範囲な場合は抗生物質を飲ませます。
ケージ内はこまめに掃除して、なるべく便が体につかないような環境を整えるようにしましょう。肥満しないように気を付けてあげるのも皮膚病の予防になります。
ハリネズミは皮膚に腫瘍ができることも少なくなく、なかなか皮膚病が治らないと思っていたら実は腫瘍だったということもあるので注意が必要です。
まとめ
ハリネズミにとてもよくみられる皮膚病ですが、ほとんどの場合治療や予防が可能です。皮膚病の治療は長くかかるものも多く、治療費もかさんでしまうので、ケージをきれいに保つ、肥満させないなどのケアをしっかりして、皮膚病にならない環境を整えてあげましょう