ハリネズミ

[獣医師監修]ハリネズミの鼻炎、気管支炎、肺炎、肺腫瘍の原因・症状・診断方法・治療方法

お迎え直後のハリネズミは環境の変化から体調を崩しやすく、鼻水が出たりくしゃみをしたりして飼い主さんを心配させることが良くあります。

ハリネズミをお迎えする前から知っておきたい、ハリネズミの呼吸器の病気について解説していきます。

ハリネズミの呼吸器の病気

鼻や気管、肺などの空気の通り道を呼吸器といいますが、呼吸器にもいろいろな病気が起こります。

多くは炎症によるものですが、腫瘍ができたり、心臓病の病気が波及して呼吸器に問題を起こすこともあります。

ここではハリネズミが呼吸器に問題を起こす原因や治療法について考えていきたいと思います。

呼吸器の炎症(鼻炎、気管支炎、肺炎)

原因

ハリネズミが鼻炎や気管支炎、肺炎などの炎症を起こす原因としては、不適切な環境によるものと感染症が多くみられます。

特に若いハリネズミの場合、温度や換気、床材などの環境に十分配慮することで、このような病気をかなり予防することができます。

もともと温暖で乾燥した土地に住んでいたハリネズミは暑さ寒さに弱く、適温を保つための努力が必要です。

特に体温調節が下手な若いハリネズミは、20℃を超えていても寒さで体調を崩すことがあるので、25℃以上を保つようにしましょう。

アクリルやガラスなど水槽タイプのケージは、温度を保つには良いのですが、便や尿から出るアンモニアなどを含む湿った空気が水槽内にこもりがちです。

このような空気を常に吸い込んでいると、呼吸器を痛めることがあります。

こまめに掃除をして、換気にも十分気をつけましょう。

また芳香剤が問題になることもあるので、ハリネズミのケージの近くでの使用は控えるようにしましょう。

床材に潜り込むことが多いハリネズミは、砂やチップなどの床材から出るダストを吸い込むことが呼吸器トラブルの原因になることもあります。

物理的な刺激になるだけでなく、チップなど一部の素材はアレルギーを起こすこともあるようです。

ざるで細かいダストを取り除いてから使うようにするか、ダストの出ないペットシーツやキッチンペーパーに変えるのも良いでしょう。

栄養状態の悪さが呼吸器の病気につながることもあります。

特に食の細いハリネズミは、本人が食べるものを優先して食事内容が偏りがちです。

高たんぱく・低脂肪を基本として、たんぱく不足や脂肪や糖分過多になっていないか見直しましょう。

このような環境の問題や本人の抵抗力の低下があると、細菌やウイルスが入り込み、呼吸器の感染症を引き起こします。

主にPasteurella multocida、Bordetella bronchiseptica、Corynebacteriumなどの細菌が原因となります。

アデノウイルスなどのウイルス感染によるものも報告があります。

症状

くしゃみや鼻水など風邪のような症状で気づかれます。

威嚇のときに出す音と紛らわしいこともありますが、怒っているわけではないのにプシュプシュなどといった音を出すときは、くしゃみや異常な呼吸音の可能性があるので注意が必要です。

ひどくなると肺炎に進行し、元気がなくなって痩せてきたり、熱が出たり、ひどくなると口を開けて呼吸をするような呼吸困難の状態になることもあります。

症状が軽いうちはなかなか気づかれず、ゆっくり進行してかなりひどくなってから初めて判明するということも少なくありません。

診断方法

可能であればレントゲンや超音波検査を行いますが、ハリが邪魔して正確に評価できないこともあります。

血液検査を行って感染の兆候を確かめたり、脱水の具合やほかの臓器の状態を調べることもあります。

鼻水を取って培養して原因菌を特定し、どんな抗生物質が効くかを調べることもあります。

呼吸が苦しいときは検査のリスクも高くなるので、行う検査は慎重に選びます。

治療方法

抗生物質や気管支拡張剤などの内服が中心になります。

このような薬を霧状にして吸い込ませ、直接呼吸器に届かせるネブライザーの治療も効果的です。

人ではカップを口に当てて行うネブライザーですがハリネズミでは難しいので、ハリネズミを小さなケースに入れてそこに薬剤入りの霧を満たす形で行います。

食欲が落ちていたり弱っている場合は、点滴をしたり、高栄養食を流動食にして食べさせることもあります。

肺腫瘍

ハリネズミは腫瘍の発生がとても多いことで知られており、肺にも腫瘍ができることもあります。

肺が腫瘍の発生源となることはあまりなく、体のほかの部分にできた腫瘍が肺に転移するケースがほとんどです。

比較的高齢のハリネズミが多いですが、若いハリネズミにも見られます。

症状

肺炎と同じように、元気や食欲がないという不特定のものからはじまり、だんだん痩せてきて呼吸の状態が悪くなります。

診断方法

レントゲンや超音波検査で行います。

皮膚にできる腫瘍などでは、しこりに針を刺して細胞を取り、どんな種類の腫瘍かを確認するのですが、ハリネズミの肺に針を刺すことは難しく、腫瘍の種類まで特定できないことも少なくありません。

他の部位に腫瘍ができている場合は、その腫瘍の転移の可能性が高くなります。

治療方法

肺腫瘍を手術で切除することは難しく、ハリネズミの抗がん治療もまだ確立していないため、残念ながら完治は難しいです。

リンパ腫ではステロイド剤で一時的に腫瘍が小さくなることもありますが、効果は一時的です。

他の部位にできた腫瘍が肺に転移することが多いので、原発の腫瘍を早期に発見・切除して肺転移を防ぐことが重要です。

治療は必要に応じて点滴や痛み止め、食事の補助などを行い、苦痛なく快適に暮らせるためのケアが中心になります。

まとめ

くしゃみや鼻水など上部の呼吸器に起こる問題は比較的気づきやすいですが、肺の問題は進行するまでわからないことも少なくありません。

特に高齢になると痩せたり元気がないのも年のせいかな?と思ってしまいがちですが、小さな変化を見逃さずにキャッチしてあげられるといいですね。